国内最高峰のレゲエ・バンド、THE HEAVYMANNERSに2009年まで在籍し、その後リユニオンしたDRY&HEAVYにもサポートメンバーとして参加したsahara(キーボード/プログラミング)、ルーツ・レゲエ/ダブ・バンド、SOUL DIMENSIONのドラマーも務めるohkumaが新たにスタートさせたエクスペリメンタル・ダブ・ユニット、UNDEFINED。ジワジワとその噂が広まりつつある注目のユニットが初音源となる7インチ ヴァイナルを3月13日にリリース!
美しいピアノのメロディー、アナログ機器による深い残響音/ノイズ、ミニマルかつ疾走感のあるドラムが織りなす、エクスペリメンタル・ダブの極北。レコーディング・エンジニアはTHE HEAVYMANNERSのダブ・エンジニアも務める小林"Che Que"宏信、マスタリングはビートメイカーとして自身のアルバムも数多く残しているAZZURROが担当。ヴィンテージなダブ・サウンドの深みと、ダブの現代的魅力を兼ね備えたハイクォリティーな2曲が完成した。
リリースは国内発のダブレーベル、newdubhall records。Dub Store Record Martをはじめ、ヨーロッパなど海外でも発売されることがすでに決定している。3月26日に東京・落合Soupで行われるリリース・パーティーでは秋本“HEAVY”武士(DRY&HEAVY)の出演も決定しているほか(UNDEFINEDとのセッションも行われる予定!)、3月18日には世界最大級のダブ・フェスティヴァル「INTERNATIONAL DUB GATHERING」のJAPAN LAUNCH PARTY(@大阪SUN HALL)への出演もするなど、国内外で話題を集めつつあるUNDEFINED。彼らの今後に注目せよ!
大石始
都会の夜空に浮かぶ数少ない星たちのような音、それぞれの間を埋める漆黒の空間とともに風景を描き出す。そこで輝く星はまた、美しい。それは言ってしまえば人口の風景でもあるのだが、大自然の夜空に浮かぶ大量の星とは違った美しさがある。
本作はまさにそうした、人の手によって生まれる、有るものと、無きものの存在感によって無限のイマジネーションを掻き立てる類の音楽と言わざるを得ないだろう。
秋本“Heavy”武士率いるレゲエ・バンド、THE HEAVYMANNERS(2009年まで在籍)、その後、オリジナルのリズム・セクションとしてリユニオンしたDRY&HEAVYにもキーボードのサポート・メンバーとして参加したsahara(キーボード /プログラミング)と、ステッパーなグルーヴが好事家たちを楽しませたルーツ・レゲエ / ダブ・バンド、SOUL DIMENSIONのドラマーも務めるohkumaがスタートさせたダブ・ユニット、UNDEFINED。さまざまにフォーマット化された“ダブ”をギリギリの実験の彼岸にまで追い込み、さらにダブというもの“undefined”へと解放するユニットと言えるだろう。
昨年3月にレーベル〈newdubhall〉からリリースした初のオフィシャル・リリースとなる7インチは海外でも高い評価を受けた模様だ。2018年春、第2弾のリリースとしてここに10インチ「New Culture Days」をリリースする。
本作のサウンドをともに作り上げたのは、こだま和文。言わずとしれたこの国のオリジネイター・バンド、The Mute Beat、さらにソロ名義を通して、ダブを追求し続けてきた男だ。
ここ数年は自身のthe dub station bandを率いて活発なライヴ活動も行なっている。
こだま和文とundefinedによる本作は、その音と音のスペースですら音楽的だ。テクノ由来のミニマル・ダブ的なサウンドのテクスチャーも援用しながら、まさに道なき道へと突き進むundefinedのトラック。そして1990年代後半以降同じくミニマル・ダブへもシンパシーを寄せていたこだま和文のトランペット。モノクロの世界観に鮮烈な線を描くトランペット、明滅するドラムとベース、エコーの向こう側に本作を描く3つ目のサウンドの主役は読んで字のごとく、“無”である。
そう都会の夜空に浮かぶ星のごとく孤独ではあるが力強く光る音と、漆黒の闇。暴力的な低音とエフェクティヴなサウンド、そんな過剰さと、無が対峙するダブという音楽の真髄に触れるそんな音源だ。
ダブの求道者たる両者のアーティストの深い理解によってはじめて実現可能になるそんな音源だ。
またカヴァーものなどを除くとこだま和文によるひさびさのオリジナル曲とも言える。
同じく海外でも高い評価を受けるBim One ProductionのE-Muraがミックスとマスタリングを手がけた、その鳴りも本作の作品性のひとつだ。
ここ数年また新たにいわゆるベース・ミュージックやニュールーツ系とも違ったエレクトロニックかつ実験的なダブ・サウンドがひとつの潮流として再度注目を浴びようとしてる。
まさに本作もそんな感覚も携えた作品と言えるだろう。
河村 祐介
newdubhallの第3弾リリースは、レーベル初の海外アーティストとなるモダン・ダブの注目株、Babe Roots。
イタリアはトリノに拠点を置く、アンドレア・ペリーニとアレッサンドロ・ヴェッリーナによるプロジェクトだ。
リズム&サウンド~ブリアル・ミックスといったディープなテクノ・ダブをさらに推し進めたモダン・ダブ・スタイル。彼らのスタイルを網羅した、2017年の傑作LP『Babe Roots』で大きな注目を浴びた。また他にもモダン・ダブの牙城〈ZamZam Sounds〉やミニマル・テクノ / ダブの名門〈Echocord〉からのリリースでわかるように、ルーツ・ダブの強靱なグルーヴを宿したリズムとヘヴィーウェイトなべース、そしてダブ・テクノの微細なるダブ処理、空気を溶かしてまうようなアンビエント感覚も内包し、幅広い音楽性を持ったプロジェクトと言えるだろう。
デジタルなミニマル・ダブを基盤としながらも、生楽器をフィーチャリングするなどUndefinedとも共通する部分は多い。新作でもパーカッションやトランペットなど、生楽器のサウンドを融合させながらも彼ららしいデジタル・ダブの唯一無二の世界感が空間を包み込む。
サイドAはダブの滋養が空気に染み渡る極スロウなトラックで、LPにも参加のBabe Rasが歌とトースティングで参加。サイドBにはnewdubhallの前作にあたるこだま和文をフィーチャリングした「New Culture Days」のアンサーとも言えそうな楽曲で、ベースがガイドする静寂なムードのなかをトランペットのサウンド、キーボード、パーカッション、そして残響音が断片的に浮き沈みし、空気の流れを作り替える、そんなアンビエント・ダブな1曲となっている。
河村 祐介
1st LP『Defined Riddim』、こだま和文とのコラボ・アルバム『2 Years / 2 Years in Silence』と、さまざまなスタイルのリリースが続いたUndefined。そんな彼らのホームとも言える主宰レーベル、〈Newdubhall〉から、ひさびさとなる10"シングルをリリースする。Babe Rootsに続く第4弾は、ベルリンのミニマル・ダブのベテラン、Deadbeatをフィーチャー。
Deadbeatは、2000年代初頭、グリッジ~エレクトロニカとダブの交差点を用意した、Poleことステファン・ベトケら主宰の〈~scape〉からのアルバムなどで世界的評価を受け、ベーシック・チャンネル / リズム&サウンド以降のいわゆるミニマル・ダブ・テクノの俊英として現在まで活躍を続けている。これまでにUndefinedと同じく、ZamZam Soundsからもリリース。そのシングルではレゲエ・レジェンド、故グレゴリー・アイザックをフィーチャー。現在は自身のレーベル〈BLKRTZ〉をホームに勢力的に作品をリリースしている。
本作のA面には、驚きのドラムレスのダブ・アンビエント。ブクブクと沈みゆく、水中を遊泳するようなディープな残響音の連なりは、Vladislav Delayの『Anima』を彷彿させるアブストラクトなフォルム。そして対するB面はミニマル・ダブ・テクノの、まさにDeadbeatの真骨頂。反復するヘヴィーなドラムとエコーが生成するグルーヴの波状攻撃はダンスフロアをズブズブに満たしていく。まさにベテランの揺るぎないサウンドが重く光る。静と動、ベテラン、Deadbeatの電化ダブの両サイドを堪能するべし。
河村 祐介
Babe Roots、Deadbeatといった海外のモダン・エレクトロニック・ダブの先鋭たちをリリースしてきたNewdubhall。第五弾となるアナログ・シングル・リリースは、主宰Undefined以外では初となる日本のトラックメイカー、Elementをフィーチャー。
それぞれソロ・アーティストとして海外のサウンドシステム~ダブ・シーンからも評価の高い、Sak-Dub-I、Dub Kazumanとともに、Dub Meeting Osakaの一角を担う、ElementことHiroshi Takakura。また彼はBim One Productionの1TAとともにレーベル〈Riddim Chango〉も主宰している。長らくUKを拠点に活動し、現地のサウンドシステム~ベース・ミュージック・カルチャーを骨の髄までしみこませて帰国、最近では関西から東京へと活動の拠点を移し、ベース・カルチャーを根底に、新旧さまざまなサウンドを横断する、そのDJプレイも話題となっている。また前述のDub KazumanとのNight Scoopsや、またソロとしても、レフトフィールド・ダンスホール・コレクティブ、Duppy Gunをフィーチャーしての、Bokeh VersionsとRiddim Changoのダブルネームの12インチをリリースするなど、ニュールーツからダンスホール、さらにはグライムなどのUKのモダン・ベース・ミュージックのエッセンスがミックスされたオリジナリティあふれる作品をリリースしている。
Newdubhallの5枚目のリリースとなった本作でも、まさに一筋縄にはいかないオリジナリティあふれるトラックを提供している。A面にはギンギンなシンセ・フレーズが空間を切り裂く、スローモーなニュールーツとグライムが正面衝突したような、ヘヴィーウェイトなダブを、そしてB面にはそのヴァージョンとしてドラムを抜き去り、ドローン・ノイズと低音が支配し、空間を圧迫するような重厚かつ強烈なインダストリアルなアンビエント・ダブを披露。まさにレフトフィールドなエレクトロニック・ダブの最前衛がここにある。
河村 祐介
Babe Roots、Deadbeat、Elementなど国内外のレフトフィールドなモダン・エレクトロニック・ダブのアーティストをリリースする、Undefined主宰のNewdubhall。第6弾は、ポーランドのデュオ、Jankaをフィーチャーする。
Jankaはダニエル・シュラインダ(Daniel Szlajnda)とピョートル カリンスキ(Piotr Kaliński)からなるユニット。ダニエルは本名名義で、実験的なアンビエント・テクノ、IDM的な作品を、さらにはDaniel Drumz名義ではビート・ミュージックを、どちらの名義もその拠点となるワルシャワのレーベル〈U Know Me Records〉などからアルバム・サイズの作品を複数リリースしている。そしてピョートルも主にHatti Vatti名義でリリースを重ね、ダブをひとつの起点としつつジャングル、アンビエント、ダウンテンポ、ジャズ、IDMなどジャンルを横断的に表現するアーティストと言えるだろう。まさにポーランドの実力派とも言えるこのふたりのユニットだ。Jankaとしては〈U Know Me Records〉を拠点に、2018年にそのお披露目となるシングル「Krzyżacy EP」を、そして2021年にはアルバム『MIDI Life Crisis』をリリースしている。アルバムでは、ジャングル~ジュークとIDMが絶妙に溶け込んだ冒険心に満ちあふれたリズム・デリバリーでオリジナリティ溢れるモダン・エレクトロニック・ダブ・サウンドを奏でている。本場UKとのパイプも太い、同地ポーランドを代表するダブ・レーベル〈Moonshine Recordings〉のコンピ『Dub meets Techno』にも楽曲を提供、またV.I.V.E.K が運営するロンドンのダブステップ名門〈System Music〉からもアルバム・サイズの作品をリリース予定など、今後、さらなるワールドワイドでの活躍が予見されるプロジェクトでもある。
とそんな彼らのNewdubhallからのリリースとなる10インチ「Piesek Dub / Nemurō Dub」。本作はリズムの先鋭的な冒険心と、そしてフィールド・レコーディングやコラージュなどの音響実験という、まさに彼らのサウンドを凝縮した1枚であり、日本へ、そして世界へとその才覚を知らしめる作品と言えるだろう「Piesek Dub」は、ジャングルの亡霊のようなダブ・ジョーンとも言える楽曲で、痙攣するジャングルをダブ・ミックスによって残像へと変化させることによって、ジューク的なグルーヴも想起させるダブ・サウンド、そして「Nemurō Dub」は、電子変調された子供たちの喧噪と相反するようにフリーキーな電子音が展開する、白昼夢へとトリップするヘヴィーなダーク・ダブ・アンビエントとなっている。実はこれまでにダニエルはアルバムに『こもれび』、ピョートルはフリージャズ・アンビエント・プロジェクト、ヒノデ・テープスと名付けるなど、日本になみなみならぬ関心を寄せていることがうかがえる。本作のリリースもJankaからNewdubhallへのデモのアプローチによって実現したものだという。それ故に本作のリリース、そして時を同じくして行われる来日公演は彼らにとって特別なものとなるのではないだろうか。世界的なベテラン・アーティストから、さらにはローカルな俊英も「サウンド」を価値基準に紹介するレーベル、Newdubhallのある種の確固たる姿勢も示す作品でもある。
河村 祐介
これまで国内外の先鋭的なダブ・アーティストをリリースしてきたNewdubhall。2024年の2作目は、Newdubhall主宰、Undefinedのキーボード、エレクトロニクス、Saharaによるソロ・プロジェクト、2曲のEP“Whole Earth Dub / In The Wall”となる。レーベル発足以来アナログ・リリースが続いたが、ここで初のデジタル・リリース。
そこに存在しないベースラインをクラックル・ノイズとエコーの余韻だけで導き出す静寂なダブ"Whole Earth Dub"。
そしてテープ・エコーのノイズからイメージを膨らませたという、ゆっくりとした鼓動のようなビートと差し色のシンセがホワイトノイズのレイヤーとともにミニマル・ダブの亡霊を呼び出す"In The Wall"の2曲だ。
どちらの曲もこだま和文& Undefined『2 Years / 2 Years in Silence』における「in Silence」サイドの「次」を感じさせるサウンド。マスタリングはレーベル作品にはおなじみのe-mura(Bim One Production)が手がけている。またNewdubhallでは、Undefinedのジ・アザー、ドラマーのOhkumaのソロを9月にリリースする模様だ。
河村 祐介
これまで国内外の先鋭的なダブ・アーティストをリリースしてきたNewdubhall。2024年秋のニュー・リリース。初のデジタル・リリースとなったUndefinedのキーボード、エレクトロニクス、レーベル主宰のSaharaによるソロ・プロジェクト、2曲のEP「Whole Earth Dub / In The Wall」に続き、同じくUndefinedのドラマー、Ohkumaの2曲ソロEP「Deviation / Grinding」こちらもデジタル・リリース。
Undefinedとしての活動以前となる2000年台後半は、1970年代のルーツ・レゲエに強い影響を受けたロッカーズ〜ステッパーなリディムがドライブするレゲエ / ダブ・バンド、Soul Dimensionにてドラムを担当。そして2014年のUndefined結成後は、極限までダブのミニマリズムを拡張させたそのサウンドのなかにあって、その土台の構成がレゲエであることをある意味で定義するドラムをたたき出している。
Ohkuma、初のソロとなった本作、そのプロデュースは、同レーベルの多くのミックス、マスタリングなども手がけるE-Mura(Bim One Production)が担当している。ロッカーズな小気味よいグルーヴが牽引する、ムーディなルーツ・ダブ「Deviation」、そして少しテンポを落としたディープな「Grinding」は、途中ベースラインが、ダブステップのように地を這うウォブルなベースへと変化する変化形ルーツ・ダブ。双方ともにUndefinedともひと味違った、Ohkumaの新たな世界観を開花させた作品と言えるだろう。
河村 祐介