GLOCAL RECORDS
2011年、ついにご自身の店〈GLOCAL RECORDS〉立ち上げということですが、どういうきっかけがあったんですか?
G.Minowaその少し前から個人的にネットの中古レコ屋を始めようと動いてはいて、実はホームページも作ってもらっていたんですが5年くらい放置してて(笑)。で、転機はこの場所、現在の店舗で。もともと知り合いがやっていた会社の事務所があって、そこに机を一台分だけ間借りして、〈Rudiments〉の事務所にしていて。ところが、その会社が解散することになって、でも、その知り合いがオフィスとして残すということになって。あまりそっちの仕事で人がくることもないから、「ここ、レコード屋にしてもいい?」と聞いたら、「いいよ」と言ってくれて。これをやろうというよりも状況がちょうど整ったというか。
自身のお店をやってよかったことは?
G.Minowa自分の店なんでやっぱりストレスが少ない(笑)。〈Zero〉に不満があったとかではなくて(笑)。やっぱりあそこはなんだかんだ言って飯島さんのお店だから自分が全部好きにできるわけではないのは当たり前で。
立ち上げるときに飯島さんからアドバイスは?
G.Minowa特にはなかったかな。
たしかはじめの頃は〈Zero〉にも入りつつでしたよね。
G.Minowaそうだね。一番はじめはバイヤーというか、他に3人いたから。風祭(堅太)くんと、KINKAさんとあとJAHTOME(現〈Tribal Connection〉のYAHMANらと、ジャングル・パーティ〈Champion Bass〉などで活動したジャングルDJ)もいた。JAHTOMEくんは毎日いるわけではないけど、デザインとかもできたのでいろいろやってもらったりして。で、トメくんが栃木に移住して辞めたり、KINKAくんも辞めて、祭くんも辞めて……で、いまは1人ですね。はじめはそれぞれの特異分野でコメントとか付けてたりしてて。
1人になって何年ぐらい?
G.Minowaちょうど7年ぐらいかな。最初は4人いたからもちろんそれぞれの音楽趣味で被っている部分は大きいんだけど、やっぱり全然知らない領域をそれぞれ知ってたから、それはすごく勉強になったかな。そのときがあっていまのお店もあると思うし。
店名の〈GLOCAL RECORDS〉というのは? ちょうどさっき出たようなデジタル・クンビアなど、世界各地の現地のワールド・ミュージックとモダンなダンス・ミュージックのハイブリッド的な流れを扱っていた大石始さんと吉本秀純さん監修の『GLOCAL BEATS』が出た頃(2011年刊行)でもあると思うんですが。
G.Minowa店名どうしようかなと思ってたときに、ちょうどあの本が出たときで、大石さんももちろん付き合いがあったので「大石くん、GLOCAL RECORDSってお店の名前にしてもいい?」って訊いたら、「いいですよ!」と快諾してくれて。だから最初は、大石くんが関わってると思って来店するお客さんも結構いましたね(笑)。「大石さん今日いるんですか?」なんて聞かれたりして「名前をもらっただけで……」という。
2010年前後といえば、2000年代末にレコード市場はいまと全然違って、シスコが無くなったりとレコード店は結構大変だったと思うんですが。
G.Minowa当時そうは思ってたんだけど、当初の3~4年は、今振り返れば大変だったのかもな、という。売り上げも不安定で、スタッフも4人いて、みんなに払える給料なんて最低限で。時給換算したら500円くらいだったんじゃないかな……(笑)。やっぱり、シスコとかスタイラスとか次々なくなって、みんなもレコード屋に行くという習慣もなくなってという、レコードが下火になってしまった時期はそういうところもあるんじゃないかな。
どうそれを乗り越えたんですか?
G.Minowa最終的に風祭くんと二人になった時期に、もう一度自分たちの姿勢を見直して、「とにかく毎日レコードをたくさん登録して、ちゃんとコメントも書こう」を真面目に……前が真面目じゃなかったというわけじゃないけど、ちゃんとやろうと。そうしたら当たり前のことなんですけど目に見えてお客さんが増えてきて。それが2015~16年くらいの時期かな。
近しい人たちの新譜は直接、あとは中古の買取もあると思うんですが、仕入れとかってどうやってるんですか?
G.Minowa基本的には自分の膨大なストックから出していて。とにかく溢れかえっているので。買取も一見さんとかはなくて、むしろ仲の良いDJからの買取って感じですね。
海外のお客さんとかは?
G.Minowaここ数年はやっぱり、1日一組か二組は必ずくるようになりましたね。うちが扱っている1990年代~2000年代とかのクラブ・ミュージックの12インチとか、10年前とかは海外の人はなかなか買わなかったんだけど、ここ最近、買われはじめていて。当時、アメリカにはイギリスの12インチがあまり入ってなくてというのがあるみたい。
お店があることでお客さんとのコミニケーションもあると思いますが、ここ最近の変化ってありますか?
G.Minowa2020年のコロナ禍が明けるぐらいの、2022年とかから急にお店にくる若い子が増えて。通販も含めて20代の人が増えたと思う。コロナの時期ってちょうど飯島さんが亡くなった時期に重なって、自分の店よりもまずは〈Zero〉の店仕舞いをやらなきゃと手伝ってて。だからお店も開いてたり、開いてなかったりというのが続いたんだけど、それが一段落したぐらいから急に若い子たちがきはじめて。
飯島さんに最後の頃に会ったので印象的なこととかありますか?
G.Minowa最後にちゃんと会ったのは……たしか新宿ドゥースラーに〈Worship Records〉のRob Paineを〈Zamzam〉繋がりでサハラくんが呼んだときじゃなかったかな。あれが2019年の10月とか11月ぐらいだった気がするんだけど、そのときは普通にビール飲んで乾杯したりして。で、その後、体調を崩してもうお店も開いたり開いてなかったりという状態が続いていて、そのあと入院されてすぐにという感じで。
GEZAN、そして三輪社
なるほど、ちょっと話は戻りますがレーベル〈Rudiments〉から、2010年代中頃になるとレーベル名も〈GLOCAL RECORDS〉に改めてますよね。
G.Minowaあれも一区切りつけたいなと思ってた時期で、ちょっと精神的にも疲れていた時期があって、お店としての〈GLOCAL RECORDS〉もはじめて、レーベルの方もなにかリセットしたいなと。それで〈Rudiments〉を閉めて、お店とおなじ名前でやっていこうと、それが2013年にROJO REGALOの『FOUND LOVE』を出したときかな。〈Rudiments〉時代から出しているけど、名前が変わってからもリリースしてもらっていて。そのあとにアラゲホンジで。
アラゲホンジは特にまたクラブとは違ったシーンへのアプローチもあったんじゃないですか?
G.Minowaそうそう。民謡、ワールド・ミュージックから、もうすこしクロスオーヴァーしたところの音楽だから。
最近では〈Rudiments〉時代から出しているAKIO NAGASEさんと沖縄のシンガー、稲嶺幸乃さんのコラボLPとかも出していて。
G.Minowaそうそう、アキオくんとはつきあいも長いし。一昨年ぐらいから、正直CDはいま出しても売れないって感じはあるので、ちゃんとしたジャケットがあってというLPの形でリリース続けていきたいなっていうのがあって。そこで新たにまたここ最近の方向性がひとつ出てきたというか。それが2024年の『Loop Diary』のLPで、さっき出たChimp Beamsのマリヒトさんのプロジェクト。その後、2025年にMamazuの『Alias』のLPがあって、そのあとにいま出たアキオくんのLPがあってという。
GEZAN(with Million Wish Collective)の12インチはどのような経緯で?
G.MinowaGEZANは、9年ぐらい前に知ったんだけど、とにかく単純にファンというか。『NEVER END ROLL』(2016年)というアルバムが出たときに、ヤバいなと思って。いろいろ調べていったら、K-BOMBとかとつながりあるんだなと思ったんで、K-BOMBとマヒトがイベントやるときとかに直接会いに行ったりして。なにか出せないかなとか、イベントとかできないかなと思ってたんですけど、逆にGEZANのガチなファンになってしまった自分がいて(笑)。そういうときって変にアーティストに近づかない方がいいっていうのあるじゃないですか?ファンのままでお店としてはもちろん取り扱うぐらいの感覚でいて。ただギターの(イーグル)タカくんが、うちのお店にも普通にお客さんとして買いに来るようになって。
いろいろなパーティにも出没しますよね。
G.Minowaそうそう、そうやって結構話す様になって。今回12インチにした『i ai』は、もともと映画の主題歌になった曲ですごい好きで。というのも、プライベートで結構キツい悲しい出来事があって。ちょうどその頃にあのサントラがリリースされて『i ai』ばっかり……あとその前のアルバム『あのち』に入ってる『Third Summer Of Love』っていう曲ばっかり聴いてた時期があって。そのぐらい、プライベートなことも含めて思い入れがあったんですよ。で、そのときに「この曲の12インチを出したいな」と思うようになって。そのアイディアとほぼ同時にコレはCOMPUMAさんにリミックスをお願いしたいってイメージが涌いて。もちろん彼らは彼らで自分たちのレーベルもあるし、無理だろうな~ぐらいに思ってたんだすけど、タカくんがお店にきたときにダメ元でこういうことやりたいって話したら、「マヒトにきいておきますね」ってつないでくれて、2日後に「マヒトよろこんでましたよ」ってスタートして。
レーベルで今後やってみたいことってありますか?
G.MinowaDJバーとか、お店、場所とコラボしたレコードをなにか出せたらいいかなとぼんやりと考えていて。例えばアキオくんと、その場所と仲が良いアーティストの楽曲がスプリットで入ってて、それぞれがリミックスもしてというような、そういう企画とかも考えていて。〈88Block〉の〈Hoodish〉と〈GLOCAL RECORDS〉でなんかやりたいよねというのは、うちうちの話程度ではあって具体的には進んではないんだけど。あとは、これはもう完全な思い付きで、まだなにも話してないけどBlast Headの『Head Music』とかLP化したいんだよね。
また今回、下井草に新しい店舗を共同で出すみたいですが。
G.Minowaそうそう。Chee Simizuさんの〈Physical Store〉の隣のスペースでやってたセレクト・ショップ〈Planet Baby〉が2025年の年末に締めちゃったので、そこにまた新しいレコード屋を出してという。といってもWistraっていう若いDJが中心で、自分とCheeさんところも出して〈三輪社〉。僕は〈GLOCAL RECORDS〉がメインなので店に立つことは週に1回か2回だと思うんだけど、自分が受け持つのはクラブものがメインになると思う。〈Physical Store〉はそのままで、そことは被らないジャンルのものを〈三輪社〉で出すというようなお店ですね。いろいろロックとかも広げていくかなと。
どんな経緯で?
G.Minowa去年、たまたま遊びに行ったときに「隣、お店締めちゃうから誰かなにかやらないかね」っていう話になって、俺もまだまだレコードの在庫あるからそっちでも出せないかなって話しをしてたら、そのままというか(笑)。Wistraがメインでお店に立って、隣にCheeさんもいるからサポートしてくれるし、可能性もあるなと。〈Physical Store〉がいるからできるっていう。いちから下井草でレコ屋っていうのはさすがに大変ですよ。〈GLOCAL RECORDS〉本体も、今年で15周年で、なんかやりたいな~と思いつつ。
location:GLOCAL RECORDS
interview date:2026.01.29