newdubhall is a sound label since 2017. experimental dub music from the far east.

talking place Taichiインタビュー:〈後編〉 ─日常のエンジニアリング─

talking place#10
with Taichi

with Undefined

もともとUndefinedとのかかわりは? “録り”はここでTaichiさんのエンジニアでやってるんですよね。

Sahara(Undefined)そうですね。

Taichiさんから見て、Undefinedのお二人を観ててどうですか?

Taichiカズとオオクマくん(Undefinedのドラマー)は空気感が合っている感じがしてて、一緒にやっててとにかく楽しいタイプですね。そこまで「う~ん」ってなることもないし。

Saharaすぐ帰ろうとしますからね(笑)。

Taichiそう、来たときにまず「今日は何時に帰る?」という話からはじまるよね。「今日はレコーディング、2曲くらいかな」とかね。「3テイクやっても一緒でしょ、これ以上やってもね」というタイプの人たちだから。その辺は経験もあるし、大人な潔さとかが気持ち良いですね。たぶん、40代前後の人ってそいういう人多いかもですね。練習も経験も積んできてそこまでに完成されているというところがあると思うから。

ふたりがここで録ったきっかけは?

Saharaはじめはチェケ(小林宏信)に中野のHeavysick Zeroでイベントが無い日にお願いして録ってもらってたんですよ。でも、やっぱり自分たちも普通に平日は仕事をしていて、逆に彼には週末が本業のPAエンジニアの仕事があるんで、なかなか日程が合わなくなってしまって。そこで悩んでたときに、ちょうどTaichiくんがここで録れるよって連絡をくれて。自分達もUndefinedをやり始めた頃かな。たしかTaichiくんが田我流くんのバンドをやってて、dublabのイベントで一緒になったんだよね。

Taichiああ、dublabのUnitのイベントかなんかだ。

Saharaそうそう、そこで実際に自分たちのライブを見てくれて、「カズ、今こんなことやってるんだ」という流れから連絡を取り合うようになったのかな。2015年くらい。

TaichiUndefinedでいえば、実はオオクマくんが、カズよりここを使ってたのが古くて。Soul Dimension時代にはアルバムを録ったり、リハで使ってたから。オオクマくんはここの勝手がよくわかってたと思う。

Saharaたしかにそうだね。このあいだ確認したら、まだ出てない音源が大半だけど、もうここで20数曲録っててて。

Taichiえ、もうそんなに録ってるっけ。

今度出るLPなんかもここから?

Saharaそうですね。録るだけとってリリース出来ていないというのが多いですけど。

良い音とは

スタジオで働いていることで、自分の活動に影響ってあると思いますか?

Taichi基本は知り合いの人が使ってくれるパターンが多くて、ここでの仕事を通じて知り合ったみたいなことは少ないんですよね。なんというか自分が飲み屋をやっていてそこに友だちが来る感じに近いかな(笑)。

座右の名機みたいなものはあるんですか?

Taichiなんだろうな。最近はスピーカーかな、ATCのこのモニター・スピーカー。コレで聴いて良いサウンドで録れてると、「あ、大丈夫だな」って嬉しくなるんですよね。

良い音とはなんでしょうか?

Taichiなんだろうな。もちろんシチュエーションで変わるものだと思うけど、例えばぼ~っとしているときに「え、コレなに?」というのが、やっぱり良い音とか良い音楽だと思うんですよね。なにをしててもその音を聴いたときにハッとするときが良い音なんだと思います。気になってしまうというか。例えば声とかも象徴的ですけど、「いまの声は誰?」って思ったとき、それは「良い」と一瞬でも思ったから気になってると思うので。好きな音がかかっても、システムがダメだと、やっぱりすごい嫌な思いもするし。

リファレンスにしてる盤は?

Taichi流れによって変わってきていて、それこそ「いま聴いてかっこよかったもの」という感じはありますね。いま好きだなっていう音にしているというか。あとはやっぱり、自分たちの音源でウッチー(内田直之)にレコーディング、ミックスをやってもらったものというのが、前提にあるかな。ウッチーにレコーディング、ミックスしてもらった曲や手掛けた作品を聴き比べしたりというのはよくやってるかも。

内田さんのすごさとは?

Taichiもう、それこそウッチーは職人だと思う。これまで幸運なことにGroupで最初にやらせてもらったときから、1stと2ndがあって、ソロもやってもらって、さらにStimがあって、田我流とカイザーソゼもレコーディングしてもらって、とてもオリジナルというか、純粋にかっこいいというか、あの人の出す音に惚れているから、ずっとすごいなと思ってて。

今後

Stimなど今後の予定は?

Taichi一応、3曲は録っていて、まだ形にしていないという感じですね。もう1曲くらい作って、EPっぽい形で出せればなと思っている段階。年内中にはそれを出したいなと。あとは3曲のアレンジを詰めたり、エンディングに向けてなんか作りたいなというところで止まってて。もうちょいって言って1年ぐらい経ってるけど。

ソロは?

Taichiそっちは進行してないですね。でも、こういうのが作りたいなと漠然としたアイディアは有ります。(笑)。

頭のなかには鳴っていると。

Taichiそう、それも年内にはなんとか形にしたいとはいつも思ってる。まだ6月(取材時)で、あと2021年も半年あるからなんとかなるよね(笑)。タスクとTo Doをちゃんと整理しながらやりたいなと思ってて。でも最近は、メインストリームのヒップホップのサウンド感がみんなが求めてる音って感じがしてしまって、だからそれ以外のアプローチのトラックを作ってもなかなかフックアップされる機会が少ないのかなという。「こういうの曲作りたいな」とかはもちろんあるんだけど、「いまの人たちってこういうの絶対面白がって聴いてくれないんだろうな」とか思ってしまって。

いまそういうのは顕著にあるかもですね。サブスクで全部聴けるけど、表に出るものはある傾向の似ているものというか。

Taichiそうそう。自分が作りたいものと、そこが違うとなかなか難しいよね。そういうのも含めると素直に作りたいものが作りにくいというのはいまあるかも。もちろんフットワーク軽く、配信だけで出そうと思えばすぐ出せるんだけど、届くかどうかみたいなところを思うと、やっぱり寂しいところはあるよね。あ、そういえば、俺、最近、気づいたんだけど、ジャングルが好きみたい(笑)。改めて思った。

でもそれこそリヴァイヴァルしているサウンドではありますよね。

Taichiジャングルのラフな感じが、いまワクワクするんですよね。ちょっとドラムンベースまで行くと、洗練されて敷居が高くなるんだけど。でもジャングルって意外と作ると難しいんだよね。雑に作ると本当に聴けたもんじゃないっていう。自分はルーク・ヴァイバートのプラグ名義とかあのふざけた感じというか抜けてる感じがすごいと思ってて。ただし、ドリルンベースまで行くと、ちょっと違うなと思うんだけど。

ソロ名義でそういうのとかも聴いてみたいですね。

Sahara実は〈newdubhall〉もTaichiくんみたいに直接的にダブとは関係のないアーティストにお願いできたらとは常々思っていて。

Taichiお、うれしい。

Saharaいまうちのレーベルからジャングルはちょっと違うかもですけど(笑)。やっぱり〈newdubhall〉なんで、例えばTaichiくんなりのダブとか、なにかお題を出してお願いするとか。

Taichiそういうのはやりたい!

location:Andy's Studio
interview date:2021.06.10